美味しいほっぺにくちづけて。
「聴こえました?」




『うーんと、海?』



携帯を自分の耳に当て直す。

空さんはわかってくれたようだ。



私は、海にいると伝えると空さんは見てみたいと、呟いた。


消して、透き通ってもないし、綺麗でない海だけど、私には、いつもある場所だった。



おばあちゃんと小さいころ、来た海だから。
おばあちゃんとおじいちゃんと、良く来た海だから。



たくさんの、思い出が蘇ってくる。




『どうして、海にいるんだ?』




「昨日、余り眠れなかったので、海でも見て、気持ちを落ち着かせてたんです。」




『そっか・・・小海らしい。』



ぼそっと言う空さん。
そんな空さんが、一瞬思い浮かんだ。



「そうですか?あ・・・空さん、見っけ。」




『あ?』



私は、ふふっと笑うと、不意に海の上にある空を見上げた。空は、いつでも、どこにでもある。
けして、無くならない。




「空を見上げたら、空さんがいるなぁ~って思って。だって、空さんの名前だし。」



『はは、そうゆうこと。・・・おまえの感覚、純粋過ぎて追い付けねぇよ。』



空さんは、私の言葉を聞いて笑う。
空さんに、そうですか・・と言うと、空さんは短い返事をした。




『それじゃあ、俺は今も、おまえと一緒にいるってことか。』




「ふふ、そうですね。」


空さんだって、結構ピュアじゃないですか。



『良かった。こんな時に良かったなんて、侵害だとおもうけど・・・小海の心が、落ち込んでなくて。」



空さんは、なんか変だなと、苦笑いしているようだった。



そんなこと言われたら、空さんの顔を見たくなる。声を聞きたくなる。

頭を撫でてほしくなるじゃないですか。



「空さんに会いたくなります・・・そんなこと言われると。空さんは、人の心をそっと照らしてくれる人、ですね。」


空さんは、大きな『空』みたいな人だと思う。

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