美味しいほっぺにくちづけて。

これって浴衣デート?

おばあちゃんのお葬式も終わり、私は日々の生活に忙しく慣れてきていた。




身内が亡くなったからといって、お客さまには関係ないこと。
お客さまの前では、いつも笑顔でいなくてはいけない。



お客さまから「どうしたの?」なんて聞かれちゃ、もってのほかだ。


私もいつまでも切ない気持ちでいてはいけないと、翌日から気持ちを切り替えた。




約一ヶ月が過ぎた。


もう八月も中旬。千晴さんのお腹も大きくなっているみたいだ。
私はその大きくなってゆくお腹を見るのが好きだったりする。




あれからお葬式の帰り、空さんに住み込みの家まで送ってもらったっきり、空さんとは交流はないのだけど・・・




「小海、この材料しまってくれる?」



「あ、はい!」




咲良さんに、頼まれごとをするも、頭の片隅には空さんがいる・・・



忘れていても、時折あの笑顔で私を見てる。



「あんた、いつまでもぼぉ〜としてんじゃないわよ。」




「あは、ごめん。」



普段からぼぉ〜としてるんだから、しっかりしなさいよ!とそばにいた、美玲に少し喝をいれられる。


おばあちゃんが亡くなってから、一ヶ月。ようやく実感して来た。


たまに、ぼけぇ〜と上の空になっちゃうけど、仕事もこなしていく。


おばあちゃん、私のこと空の上で見てる?



おばあちゃん、私・・・がんばるよ。


おばあちゃん、大好きだからね。
ずっと、大好きだからね。

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