元教え子は現上司
 生徒とね、あんまり仲良くなりすぎてはいけませんよ。あと体罰もダメね、ぜったい。

 教え子相手に、なにをしてるんですかっ

 いい教師になりなさい。

 記憶が洪水のように押し寄せて、なにも言えずにただ相手を凝視する。八年の間に、少し痩せただろうか。けれど目尻の皺に埋もれた眼差しは変わってなかった。厳しくて優しい、先輩教員のままだった。

「暑いでしょう。中に入りなさい」
 呆然と相手を見ていると、袴木はそう言った。そのまま碧の返事を待たずに校舎へと戻っていく。どうしていいかわからずその場に立ち尽くしていると、チラとこちらを振り返って浅く頷く。

 指導教員に呼ばれたら、すぐに立ち上がってデスクまで行くこと。

 いつか教えられたそんなフレーズが頭に蘇り、おもわず足が動いていた。小走りで後を追いかける。

 ドクン、ドクン。

 心臓が熱い。頭上の太陽のように。

 いけー!

 グラウンドから少年たちの声がした。
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