エリート室長の甘い素顔
06
 安藤と待ち合わせたのは、悠里の住む区内の外れにある大きな都立公園だ。


 なぜか「動きやすい格好で来て欲しい」と言われた。

 それならばと、長袖Tシャツの上に半袖を重ね着して、短いランニングスカートとスパッツを履く。
 足元は靴下とスニーカーで、そこらをジョギングしていても何の違和感もなさそうな格好をした。


 外は天気が良いが、気温は低い。

 そのままでは寒すぎるから、上だけは軽くて暖かいダウンコートを羽織った。


 家を出て、歩いて公園に向かう。


 三車線の大通り沿いにあるその公園は、広い敷地の真ん中を幹線道路が通っていて、エリアが二つに分かれている。

 一方は野外ステージや大きな屋外テニスコートなどの設備が固まっているエリア。
 もう一方は噴水や大きな芝生の広場、そして植物園などがあるエリアだ。

 間を通る幹線道路には大きな橋がかかっており、そこを渡って二つのエリアを行き来できる。

 この公園でデートするなら、普通は植物園があるほうのエリアに向かうだろう。

 だが安藤は今回、反対側のエリアを指定してきた。


 公園の入り口が見えてきて、目を凝らせば門柱石の前に安藤が立っている。

 腕時計を見れば、まだ待ち合わせの10分前だ。


(さすがです……)

 きっと自分よりも早く着いているだろうと予想していた悠里は可笑しくなって、思わず笑みを零した。


 約一か月ぶりに彼の姿を見たが、遠目でもやはりスマートである。

 下はジャージで上はパーカーというとてもラフな格好であるにもかかわらず――

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