エリート室長の甘い素顔
「安藤さんの何が不満なの?」

 母の言葉に悠里は目を丸くする。

「は? いや、不満なんかないけど……」


 母も雪枝おばさまも、最初に顔を合わせた時以来、安藤が大のお気に入りだ。

 何も問題なければ、ここぞとばかりに話を進めようとするだろう。

 だからこそ、時間のある時に顔を合わせるのを避けていたのだが――


「悠里。あなたお見合いしたのよ、わかってる? お見合いっていうのは結婚が前提なの。相手だって、この話がダメなら次を探さなくちゃいけないのよ? そんなグダグダ迷ってたら安藤さんだっていい迷惑よ」


 思わぬところから刺された。

 悠里はグッと詰まって下を向く。


(次の相手を探さなくてはいけない……)

 それはその通りなのだろう。

 結婚する気がないのなら、なるべく早くそう伝えるのが筋というものだ。


 黙り込んでしまった悠里を見て、母はとりあえず言いたいことは言ったからと、自分の部屋に引っ込んでいった。

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