チューリップの花束に愛を込めて


『な、なんでもない!!』


あたしは健太の腕を引き、廊下を歩く。



だって…あの場に突っ立ってたら、健太が由奈ちゃんの視線に気付いてしまうかもしれない。



そしたら。


そしたら、きっと、健太は由奈ちゃんに告っちゃう…。



そんなの、そんなのやだよ!!





『亜季、立ち止まったり、急にせかせか歩いたり、変だよ?』


『…変なんかじゃない!』



やだ。


やだ。


絶対に健太に告白させたくないよ!


健太はあたしにとって…




『そういう時って、大概なんかあんだよ、亜季は。
 ずっと一緒にいたんだkら、亜季のそういうとこ、分かってるつもりだよ?』



うそだ。

うそうそ…



だって、それが本当なら、


どうして、あたしが好きなのが分からないの?





『健太にだって…分からないことあるよ』




『え?』



小さい声での反論はどうやら健太には聞こえなかったらしい。




『亜季、なんて言ったの?』


『あたしにだって健太のこと全部知ってるわけじゃないよ。
 だから健太もあたしのこと、全部分かるわけないじゃん…』


あたしの言葉に健太は首を傾げる。



『分かるよ、亜季のことなら。
 なめんなよ、幼馴染を!』


そう言って、健太はお得意の笑みを見せる。




どうして?


健太はあたしの気持ち、何も知らない…



それはあたしが健太に伝えてないから。




でも、健太の答えなんて分かりきってる。



それなのに、気持ちを伝えて、それで幼馴染にも戻れなかったら…





そんなの、絶対にいや。




だから、何も言えない、伝えられない。




あたしは、どうしても。


どんな関係であっても、健太の傍にいたいよ…




どうして、あたしの好きな人は、健太なんだろう…


どうして健太の好きな人は、あたしじゃないんだろう…




健太、由奈ちゃんじゃなくて。


あたしを好きになってよ…




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