優しい狼。
一人の虎
見慣れない町並み。見慣れない人々。
初めて巣をたった小鳥のような気分。
あらゆる物に興味を示し、すべてが輝いて見える。




私は今、隣町の繁華街に来ている。

いつもは自分の住む町でショッピングするのだが、それは私にとって居心地の悪いものでしかなかった。


高校へ入学してはやいもので半年。


梅雨もそろそろあけるこの季節には珍しい晴天。


こんな晴れた日に外に出ずに、いつ出るというのか。

いつもは決して一人で外出などしない。

いや、できない。


家から一歩出ればそこには必ず危険が伴ってきた。


なぜなら。


私、春日 結(かすが ゆい)がその街で、日本でもトップを争う暴走族である、焔虎(えんこ)の、その中でも頂点に君臨する総長、古村 龍樹(こむら たつき)の女だから。



はじめは、龍樹君が暴走族の総長なんて知らなかった。高校へ入学して初めて出来た恋人。龍樹君は私のことをとても大切にしてくれたし、そんな龍樹を私も好きだし、大切にしたいと思った。
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