ダンデライオン
Flower４＊夕焼けの思い出-Shinobu-
７月に入ると、カラッとした暑さが続くようになった。

「暑いなあ…」

俺は身につけているスーツのジャケットを脱ぐと、夕暮れの『ニコニコ横町』を歩いた。

昔ながらの店が並んでいるこの場所は、俺が生まれ育った場所だ。

「アサちゃん、今日は何を作ってくれるんだろう？」

呟いた後、俺は花屋『たんぽぽ』を経営している八束さん家の麻子ちゃんことアサちゃんの顔を頭の中に思い浮かべた。

「俺が見なくなった間に、また一段と美人になったよな…」

俺は息を吐いた。

アサちゃんがおばさん譲りの美人なのはいいことだけど、
「あの特典さえなければ、アサちゃんを口説き落としてたのにな」

彼女の婚約者である板前見習いの顔が頭の中に浮かんだ瞬間、俺は毒づいた。
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