狼×4+私=架空世界
ご飯も食べ終わり、食器を洗っているとセシルが忍び足で私の背後に近寄る。

無論、こちらには丸見えだし、セシルの目的も分かっているからあえて振り向く。

どうせくすぐって私の反応を楽しもうとしてるんだろうから。

セシルは私の予想外の行動に目を丸くしている。


「何ですか?お手伝いなら歓迎するけど。」


完璧な笑顔で皮肉を込めて言ってやるとニヤニヤし始める。

皮肉を言われて笑うってこいつMなの?

セシルはひじで私をつついてくる。


「好きな人誰だか目星ついた?」

「別に。」


そっけなく答えたつもりなのに、セシルは更にニヤついた。


「恋してることに気づいたんだね。」

「なっ!!」

「で、誰!?」

「さぁ…」

「はぐらかさないでよ!!」

「本当に分かんないんだってば!!」

「もしかして…俺!?なんちって」

「絶対ないからヤメテクダサイ。」


食器洗いに視線を戻す。

セシルはちょっと態度を改めて聞いた。


「ユイの好みは?

俺様?ドS?ほんわか?」


なぜにその三択。

ってその順、左からフウト、マシュー、ハヤテでしょうが。

呆れを通り越して笑える。


「ユイのことだからフウトはないとして…」

「俺がなんだよ。」

「ぎゃっ」


セシルがフウトに首根っこを掴まれる。

そのまま揺さぶられ、セシルはごろーんと転がされた。

フウトは近くにあった椅子の背に腰かけた。

真顔でフウトがこう言った。


「で、誰なの、ユイの好きな人ってのは。」


聞き耳立ててたな、こいつ。

私は心の中で密かに舌打ちをした。
< 33 / 76 >

この作品をシェア

pagetop