狼×4+私=架空世界
目を覚ますと、冷たい金属に囲まれた部屋にいた。

手が重い。

手錠と足枷がついている。


目の前には上品なスーツを着こなした男が立っていた。

黒い眼鏡を掛け、私を見降ろしていた。


「やぁ、やっとお目覚めかな?お嬢さん。」

「…ここは」

「見て分かる通り、檻だ。

何故なら、君は犯罪者だからだ。」


犯罪…

恐らく、殺人罪ってところだろうか。

男は青いネクタイを押し上げた。

朦朧とした意識の中で私は能力を使った。

しかし、何故か見えない。


「君を拘束しているその手錠と足枷は、能力者が能力を上手く使えない成分が入っている。

君は、浅間直樹、水谷章子(ミズタニアキコ)殺害の容疑でもうすぐ刑が執行される。

その中にあいつがいるのがまた、腹立たしいところだ。

全く、家出をして家族の顔に泥を塗った挙句、人殺しだ。

本当、出来損ないの弟には困ったもんだよ。」


マシューのお父さんとフウトのお母さん。

殺害の容疑。

そのワードだけが私の頭の中を埋め尽くす。

殺害。殺人。死体。屍。

物騒な言葉が繰り返される。


「ちなみに、刑を執行するのは僕だ。

よろしく頼むよ。

…おっと、仲間たちが着いたようだね。」


遠くから騒がしい音がする。

誰のかも分からない怒声。

銃の音。バンッバンッ。

何かが潰される音。

破壊される音。


「君とは少し違うが、遠くの音が聞こえ、そこに姿を現すことが出来る。

同じような超能力者は初めて見たよ。

この手で殺すことにも少し抵抗がある。


…おや?」


男が片眉を吊り上げた。

遠くで何が起きているか私には分からない。

こちらに走ってくる足音が聞こえる。


「ユイーッ!!」

「セシル…」

「あぁ、やっぱりあいつか。

しかしなんなんだ、さっきのあの壊れ様は。」


男はそう呟いた。

やっぱり?あいつ?

ひっかかるような言葉をつらつらと並べた男は、座っていた椅子を脇に寄せた。

セシルを知っている…?
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