嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。

「私、デパート勤務固定して貰おうかしら」

「ええ! 桔梗さんが居ないと、このお店どうなるんですか」

美麗ちゃんがあわあわと可愛らしい動きをするけれど、ちょっと本気でそれもいいかもと思う。
だって、顔を合わせても沸々と怒りしか浮かんでこないんだもん。

「別に、私なんて話しかけるに値しないみたいだし」

「桔梗さん」

咲哉くんと美麗ちゃんが、私と幹太の間に何かあったのか察してしまったようで、申し訳なく思う。

いつもの喧嘩だと認識してもらえたらその方が楽だけど。


「そんなワケ、あるか、馬鹿」

調理場から幹太がぬっと重たい身体をゆっくり動かし、店側に入って来る。


「もう面倒だから、隠さねーことにする」
「何よ」
「俺の頭の中は――お前の事ばかりだよ、馬鹿か」

……。

暫くの静寂のあと、幹太が私を刺すように睨みつけた。

「今から試作品作るから、調理場に入って来るなよ」

「……は?」

……え?

えええええ?

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