嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。
「ああ。気を付けてね」
美麗ちゃんにも謝ると、大丈夫ですと笑って見送ってくれた。
バタバタと用意していると、幹太が後ろに現れた。
「バスで行くから大丈夫よ」
「いや、お前の親、足が悪くなかったか? 大丈夫か?」

――あ。
以前も台所で倒れて動けなくなったことがあったっけ。一応、それから首に携帯電話をぶら下げるようにしているけど。

「俺が晴を迎えに行くから、お前、家に帰ってこい」
「でも」
「大丈夫よ。うちの親に、幹太がお迎えだって私からも伝えてあげるから」
幹太の後ろから、オカマの声もした。

あんた、まだ居たのか。

「あんたの親?」

「晴一くんの通う保育園は、うちの寺が経営してまーす。勿論、知ってたよね」

知らない。知りたくない。
そうだったっけ?

それって、店でも保育園でも法要でもこいつに会ってしまうってこと!?
私の視界にこいつがどんどん入っていくってこと?
嫌過ぎる……。

「桔梗、いいから早く行け」
「う、ん」
オカマへ思いっきり舌をだしてから、家へ向かった。


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