英雄の天意~枝葉末節の理~

*口火の序次


 ナシェリオは表情を険しくし、揺るぎなく視線を向ける女を見上げた。

 人でいえば二十代後半とも見て取れるがハーフエルフならば数百歳でもおかしくはない。

 ハーフエルフには寿命があるとはいえ、人とは比べものにならないほどに長い生命を持つ。

 成長もそれに合わせて緩やかだ。

「エスティエル。私に何の用だ」

 再度、ゆうるり尋ねる。

 許可もなく図々しくも部屋に上がり込んだ相手が女であっても、ナシェリオは構うことなく鋭く睨みつけた。

 彼にとっては等しく人である事に違いはなく、それ以上の感情を持ち合わせてやる優しさも無い。
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