英雄の天意~枝葉末節の理~
「待っていてくれ。必ず手柄を立ててくるぞ!」

「ラーファン!」

 一段と高まる声に息子を思いやる両親の姿は埋もれてゆく。

 ナシェリオはそんな二人に胸を痛めつつ、勇みよく目的の場所に向かうラーファンの後を追った。

 ナシェリオは外に出ないとは言っても村の周囲くらいは探索している。

 あの辺りには切り傷に効く薬草がよく生えていた。

 あの小川でよく釣りをした。

 あの林には小さな彫刻に向いている木が多い──村から遠ざかるにつれ、ささいな思い出が蘇る。

 私は無事ここに戻ってくる事が出来るのだろうか。

 いや、せめてラーファンだけでも両親の元に帰さなければ。
< 126 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop