英雄の天意~枝葉末節の理~
「今まで幾人もの渡り戦士や魔法使い(ソーサラー)、放浪者(アウトロー)に頼みました。しかし、誰一人として戻って来る者はおらず」

 ニサファから伝わるギリギリの思いはナシェリオの胸に痛みを与える。

 だからといって私がそれを受ける理由はないとナシェリオは苦い表情を浮かべた。

「我々にはもう、貴方しかいないのです」

 切実なまでの訴えにナシェリオは断る言葉を逸する。

 それでも何かに抗うように素直に服する事は出来なかった。

「決めるのは話を聞いてからにしたい」

 聞いてしまえば一層、はねつける事など出来なくなるというのに、呆れるほどに悪あがきをしている。

「ありがとうございます。では、酒場に戻りましょう」

 つい先刻にひと悶着あった酒場に促され、複雑な表情を浮かべた。

 ニサファはそれに古老(ころう)に似つかわしい笑みを見せる。
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