英雄の天意~枝葉末節の理~
 ひとりぼっちになった彼を守ってやれと父親に言われ今までずっと守ってきた。

 村に残せばまたいじめられてしまう。

 ナシェリオは俺の次に強いが繊細で優しすぎるから、村の奴らに反撃なんて決して出来はしないだろう。

 優しい我が友、ナシェリオ。

「だからって……斬りつけることは無かった」

 吐き捨てるように馬にまたがる。

 ゆっくりした足取りにナシェリオも馬に乗り前方の歩みに従った。

 ──空は二人の胸の内を表すように厚く雲を作り、これから沈もうとする太陽を覆い隠した。

 雨までは降ることはないだろうとナシェリオは空を仰ぎ、黙って進むラーファンの背中を見つめる。

 彼は放浪者(アウトロー)や騎士になりたいと言うがその本質を知らない。
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