英雄の天意~枝葉末節の理~
「──っが、あ」

 ドラゴンは、掴まれたことによる痛みで唸る人間を金色の目で一瞥し林の方に逃げる影を追った。

 逃げ切ってくれというナシェリオの願いも虚しく、威嚇により口から吐き出された炎に恐怖してラーファンはその足を止めた。

 未だナシェリオを掴んだまま、ドラゴンはゆっくりと地に降り眼前の人間を見下ろす。

 ラーファンはその威容にガクガクと震えて声も出なかった。

[我を倒そうなどとは、なんと愚かなり]

 低く響くドラゴンの声に、もはやラーファンは恐怖で震えが止まらない。

 そんな彼の様子にナシェリオはどうにかしなくてはと圧迫する痛みに耐え思考を巡らせる。

「わ、私が──っ! 私が、彼をそそのかしたのだ」

[ほう?]
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