英雄の天意~枝葉末節の理~
 死は怖くない。

 私はそれが早かったというだけだ。

 じきに訪れる終わりを待っていたナシェリオだが、

[たわけ者めが!]

 怒号のあとに放たれた炎の息(ブレス)は瞬く間にラーファンを覆い、叫びをあげる暇もなく全身が燃えさかった。

「ラーファン!?」

 ナシェリオは痛みも忘れて炎に包まれたラーファンに手を伸ばす。

「やめろ! 私が! 私が計画したと言ったはずだ! 炎を消してくれ!」

 力の限り伸ばした手は友に届かず、ドラゴンから逃れようと身悶える。

 炎は見る間にラーファンを焼き尽くし、人の形をした真っ黒な塊がどしゃりと崩れ落ちた。





※仕儀(しぎ):物事の成り行き。事の次第。特に、思わしくない結果・事態。
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