英雄の天意~枝葉末節の理~
「早く殺せ」

 吐き捨ててナシェリオは覚悟を決めたと頭を上げる。

 しかし、ドラゴンは死を待つ人間を無言で見つめ、何かを思案しているようだった。

[そなた、名はなんという]

 殺す相手の名を聞いてどうするのかと眉を寄せる。

「ナシェリオ」

 あるいは誇らしげに殺した数とするためだろうかと、こんなときに不思議なほど呑気な思考が巡る。

 恐怖はとうに通り過ぎたのだろう。

 眼前のドラゴンをひどく冷静に見つめている自分に感心すら覚えた。

[そなたは大罪を犯した。然(しか)れども潔(いさぎよ)い。それに免じて褒美をやろうぞ]

 なんともおかしな物言いに顔をしかめる。

 このドラゴンは何をしようというのか。

 殺すだけでは飽きたらないというのだろうか。
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