英雄の天意~枝葉末節の理~
 ナシェリオの数倍はある体長は藍色の硬い鱗に覆われ、黒く分厚い皮の翼、尖った口にはずらりと鋭い牙が並んでいる。

 ナシェリオは苦々しく思いながらもその存在に敬意を示すため馬から下り、のそりと距離を詰めるドラゴンを窺う。

[そなたがナシェリオか]

 ドラゴンは低く、しかし威厳のある物言いで小さな人間を見やった。

 このようなドラゴンまでもが自分を知っていて探していたのかと不可解に感じ眉を寄せる。

「だったらどうした」

 深紅の瞳は睨み返す英雄を見極めるかのように視線を外さない。

 一体、己の何を見ているのかと沈黙を続けるドラゴンを同じく見つめた。

[なるほど、脆弱(ぜいじゃく)なる強き者だ]

 相変わらずドラゴンの言い回しはよく解らない。

 命に余裕があるだけに、性格がいささかおおらか過ぎるのではないだろうか。
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