英雄の天意~枝葉末節の理~
 そうして睨み合いはしばらく続き、ワイバーンは根負けしたのか今にも襲いかかるほどであった勢いは治まり、まるで子犬のようにナシェリオの胸に鼻先をすりつけた。

 ナシェリオはその頭を撫でながら汗の滲む額を拭い小さく溜息を吐くと、用意していた翼竜用の装具を馬の鞍袋から取り出した。

 慣れない作業に苦戦しつつもどうにか装着を終えてひと息吐き、次に馬の鞍を外し始める。

「お前で何代目かな」

 馬の首をさすり、穏やかな眼差しに笑みで応えた。

 ソーズワースの名は次の馬に受け継がれ、それは今も続いている。

 馬が年老うと、どこともなく若い馬が現れる。

 そうして年老いた馬が別れを告げるように顔をすり寄せ遠ざかる姿にもの悲しさを覚えるも、馬たちの決めたことなら従う他はない。

 彼らは決して、ナシェリオと共に過ごした事を後悔もしていなければ不満もない。

 それは接していればこそ解るものだ。
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