英雄の天意~枝葉末節の理~
「そうやってまた、お前はいい子ぶる」

 今も昔もそんなお前が気に入らなかった。

 一人だけ悟っているようなお前が嫌いだった。

「なんとでも言え」

 全てに目を背けていたのは事実だ。

 そんな己が不幸だと、どうして思えるものか。

 これは私が招いたことではないか。

 誰もが何かを変えられる力を持っている。

 それを畏れた私は確かに臆病者だ。

「貴様に何が変えられるというんだ」

「そうだ、変えられなかったかもしれない」

 それでも、試してみる価値はあった。

 君との関係が崩れてしまうことに怯(おび)え、私はそれすらも躊躇っていた。

 命の危うさに至る想像すら出来ずにいた。
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