英雄の天意~枝葉末節の理~
 ナシェリオにはラーファンのような名誉欲も出世欲も無かったが、外の世界には憧れていた。

 凶暴な獣、可愛い動物、続く大海原──辺境までたどり着いた物好きなアウトローから聞く語りに胸を躍らせていた。

「一緒に旅をしようぜ」

 ラーファンの誘いはナシェリオにある種の希望を抱かせる。

 しかし、それもまた躊躇いを生んでいた。

 足手まといになるのは目に見えている。

 出来る限りの鍛錬はしていても、体力に自信がある訳じゃない。

 そんな自分が彼の足を引っ張るのは確実だ。

 どのみち、ラーファンの両親が許すはずがない。

 心中ではそれに安心していた。

 ナシェリオは自分たちが思うほど世界は優しいとは考えていなかった。

 おいそれと放浪者(アウトロー)になれるほど、この世は平穏ではない事を知っていた。
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