英雄の天意~枝葉末節の理~
◆四ノ章

*徴表に至りて


 渡り戦士が来た事で、村はいつにも増して活気に満ちていた。

 自身を売り込むためなのか指南を請うためなのか、村の若い男たちはネルオルセユルの前でつたない剣を振るう。

 理由はそれぞれに異なるにしても、男が強くありたいと思うのは当然のことだ。

 そんな憧れの存在が目の前にいる。

 それだけで高揚とするだろう。

 当然のようにラーファンもその中に混ざり、声がかかるのを待ちわびていた。

 そんな若者たちの思惑を意に介さず渡り戦士はのんびりとパイプをふかし、駆け回る子供らを漫然(まんぜん)と眺めていた。

 煙を味わい、もらった量ではすぐに使い切ってしまうかもしれないと目を細めてあとの事を思慮した。

 旅立つ前に尋ねてみようかとも考えているくらいには気に入りになっている。
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