歩んだ先の未来
_自覚



ガヤガヤと騒がしい教室の中

「初めまして。私、佐藤癒音(さとう ゆね)」

出席番号で座るように指示された
入学式の日。

私は今、前に座っている癒音ちゃんという
女の子に話しかけられた。

私はとりあえず警戒心を持つ。
ただの人見知りと言う奴だ。
       
笑顔の仮面をしてしまう。
これが私の〝癖〟となってしまった。

当たり障りがなく逆にいいのかもしれない。

「初めまして。私は瀬名藍実(せな あいみ)」

どこか人を探ってしまう。

人からの評価が怖くて嫌われないように
対応するのが普通になってしまった。


「癒音でいいから、よろしくね。藍実」

私は癒音に笑って見せた。

私の方を向き癒音はいきなり
初対面だったとは思えないような雰囲気で

「藍実って可愛いよね。彼氏とかいそう。」

ちょっと引き攣りそうな顔を抑えて
私は安定した笑顔のまま

「いないよー。癒音の方がいそうだけど?」

そう言うと少し頬を赤らめて

「彼氏はいないけど、入学式で一目惚れした人ならいるよ。」

そうなんだ。と本心では興味なんてないのに

「狙ってるの?」

そう聞くと、目を輝かせながら

「うん。今度、どの人か教えてあげるね。藍実も好きになっちゃうかもね。」

と冗談で言われた。

「楽しみにしてるね。」

こうして、何事もなく
平凡な日常が過ぎていく。
この時の私はそう思っていただろう。


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