続 音の生まれる場所(下)
「二人とも、いい加減な事言わないでくれる⁉︎ ユリアさんが勘違いするじゃん」
「何だよ、俺らお前のこと褒めただけだぞ!」
「そうだよ。友人として当たり前のこと言っただけ!」

からかう様な顔をする。この二人に何言っても、暖簾に釘刺すようなもんか…。

「ユリアさん…ヤマトナデシコもイイけど…自分の持ってる良い所、無くさない方が大事ですよ…」

レオンさんという大事なカレシの為にもね…。

「ソレ…ガクチョーセンセ…イッタ…ニッポンジョシ…ミナオナジコトイウ…ミラクル!」
(たまたまだって…)

「はぁ…」

…なんか話聞いてたら、グッタリ疲れてきた…。

「悪いけど…今日はこのくらいにしてくれませんか?…少し疲れたから…休みたいです…」

ゾクゾクしてくる背中を布団で覆った。

「大事にしなよ」
「ナツ、明日来るって言ってたぞ」
「MAYUKO…ゴキゲンヨウ」
「はは…ごきげんよう…」

手を振って出て行く。

ぽすん…と枕にうつ伏せる。ユリアさんの言ってた言葉の数々が、頭の中をグルグルと駆け巡ってる…。


『SAMは劇場の帰り、いつも同じ曲を口ずさんでた…』
『僕の大事な人が大きな舞台に立つんだ。だから応援に行かないとーーー』
『今まで見たことのない…最高の笑顔だった…。いつも見る顔とは全く違ってた…』

遠い国で一人、夢を叶える為に必死だった坂本さんを、私自身が支えてやることはできなかった…。
だけど、私がフルートで吹いたあの曲が…いつも彼の心を支えてたんだとしたらーーー。


(嬉しい…力になれて……)

一緒にいなくても、心だけは通い合ってた。それが分かって、十分嬉しかった…。



……微睡む夢の中で、坂本さんが楽器を作ってる。
その隣で、彼の手元を見ながら寄り添ってる。
真剣な眼差しをすぐ隣で見てられる幸せ…。
これが夢じゃなく現実ならいいのに…と強く願ったーーー。
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