日曜日の憂鬱
休みは週2日、火曜日と水曜日。住宅メーカーはどこもそうなんだろうが、土日に休んだのは遠い昔の記憶。世の中には花金ってコトバがあるらしいが、私は金曜日に心踊らせたことなどない。



パソコンをシャットダウンし、机の上に広げていたカーテンの色見本たちをもといた場所に帰す。デスクに鍵をかけ、帰り支度が整う頃にはもう8時を回っていた。

ロッカーで束ねていた髪をほどき、暖房直撃のデスクワークでカラカラに渇いた顔に一吹化粧水を吹きかける。
砂漠に一月振りに降った雨のように、じんわりと染み込んでいくこのひんやりとした感覚が、なんとも言えない。

目の下にうっすら影をおとすマスカラを綿棒で拭って、ファンデーションは軽くおさえる程度。お疲れ顔を復活させるため、いつもより少しだけピンクの強いディオールのリップとグロスを重ねた。




普段通勤には歩きやすい5cmヒールを愛用しているが、今日は7㎝。カツカツとなるヒールの音に少しだけ背筋を伸ばして、店のドアを開ける。

「菜々遅いー!お疲れお疲れ!ビールでいい?」ジョッキ片手に手招きしているのは、同期の梨華。



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