らぶ・すいっち






「私はね、須藤さん。自分のことなのにビックリしています」
「え?」


 困ったようにほほ笑んだあと、順平先生は私の頬をゆっくりと撫でた。
 細くて長いキレイな指は、私の熱をもっと高めていく。


「貴女のことが好きだと認識してからの自分は初めてづくしです」
「初めてづくし、ですか」


 ええ、と苦笑したあと、順平先生は天井を見上げた。


「個人レッスンをすることも、こんなに必死に口説くことも。了解を得ずにキスをすることも、講演会に行くことも。そして、この家に女性を上げることも……」
「っ!」
「自分らしくないと思いますが、嫌いではない。須藤さんのキレイな笑みを見た瞬間、どうしようもなく貴女が欲しいと願ってしまった」


 再び私を見下ろす順平先生の顔は、とてつもなくかっこよかった。
 少しだけ頬を染めている先生は、今までみたことがないぐらい可愛いし。

 私は知らず知らずの間に、先生の頬に触れていた。
 ビクリと反応する彼の態度に、私はなぜか安堵する。

 緊張しているのは私だけじゃない。そして、相手のことを欲しいと思っているのは私だけではないことを。
 その長い指が私の唇に触れたとき、ビリリと何かが私の身体に走る。


「もう一度、君のスイッチを入れてもいいですか?」


 かがみ込んで私に近づきキスをしようとする順平先生を、私はやんわりと止めた。


「順平先生……」
「なんですか?」
「スイッチ、入れなくてもいいですよ?」
「え?」


 目を見開いて驚く順平先生の顔は新鮮だ。

 いつも私が驚かされたり、あたふたと慌てさせられたりしているのだ。
 少しぐらい順平先生を困らせてもバチは当たらないはず。

 私の言葉を待つ順平先生に、ふふふと意味ありげにほほ笑んだあと呟いた。


「もうとっくの昔に……入っちゃってます」
「須藤さん?」
「私、先生のことが好きです」










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