らぶ・すいっち




 順平先生は顎に手をやり、考え込むような仕草をしている。

「君にお願いしようか」

「え?」

 何のことだと警戒していると、先生は淡々と答えた。

「今月末、お祖母さんの誕生日なんです」

「え? 英子先生がですか」

 驚く私に、順平先生は深く頷いた。

「そう。今日は誕生日プレゼントを探しにここに来たのですが、ちょうどよかった。君に見立ててもらおう」

「見立てるって……」

「お祖母さんに合う口紅をですよ」

「英子先生……ですか」

 いつも和服姿の英子先生を思い浮かべる。

 優しいおばあちゃんといった雰囲気の英子先生は、いつも身なりはしっかりしている。
 シャンと背を伸ばした姿が印象的だ。

 着物はその日によって様々ではあるが、私が見たことがある色目は圧倒的に藍色が多い様に思う。

 肌の色はどちらかといえば白く、化粧の色が映える。
 でも気をつけないと、けばくなりすぎるし……。

 ブツブツと呟きながら、口紅のコーナーへ行き、いくつか手に取ってみる。

 英子先生がいつも付けている口紅は、どちらかというとピンク系。それなら……。



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