らぶ・すいっち
後日談 何より最強なのは? 3





「あら、須藤さん。いらっしゃい。お待ちしていたのよ」
「お、お、お邪魔いたします」
「まぁまぁ、何を固くなっているのかしら。料理教室でよく顔を合わせているでしょう? 緊張しているの?」
「は、はい……」


 お祖母さんを目の前にし、京はあり得ないぐらいに緊張している様子。
 いつもの勢いもなく小さく縮こまっている京はなんとも可愛い。
 思わず噴き出してしまったら、いつものようにギロリと睨み付けられてしまった。

 自分より小さな身体で虚勢を張っても、可愛らしく映るだけで威圧感などは感じやしない。

 紅茶店でディンブラのミルクティーを楽しんだあと、私たちはゆっくりとデートを楽しんだ。
 映画を見に行ったり、ウィンドウショッピングをしたりと、ごくごく普通のデートだ。

 とはいえ、京は本当に慎ましい。いや、今まで私が付き合っていた女性が強欲だったのだろうか。
 今まで付き合った女性は特に自分の外見や外聞を気にするような人ばかりだった。
 ブランド店でのショッピングを好んだり、時には強請られたりしていた。

 何かの記念日に強請られれば、私も買ったりしていたが、自発的に記念日でもない日にプレゼントを渡したいと思うことは一度もなかった。

 しかし、京はその点では今まで私が知っていた女性たちとは全然違う。
 まずはブランド店に行こうともしない。彼女には彼女なりのこだわりがあるようで、自分に似合うもの、しっくりくるものを吟味している。

 高いから良いものだとは限らない。そんな京の考え方に私は共感するとともに、好感を抱く。

 今までは強請られたから買う、そんな感じだった私なのに、京には自分から何かをプレゼントしたいという欲求さえも生まれてくる。
 本当は記念に残るような、きちんとしたものをプレゼントしたいと思ったのだが、京にプレゼントしたのは文房具。
 今人気のある万年筆らしく、“店員一押し 万年筆初心者に!”と書かれたポップが張ってあった代物だ。

 万年筆といえばピンからキリまであるとは思うが、この万年筆は格段に安い。
 ポップな色合いと値段が人気の秘密なのだろうか。


「この万年筆。とっても書きやすくって。一本欲しいと思っていたんです」

< 193 / 236 >

この作品をシェア

pagetop