Destiny



ひらりと手を振って立ち去る彼の後姿を見送る。

すぐ近くの、というか向かいの通りの、
キャバクラやホストクラブがたくさん入ったビルの中に入って行った。

よく見たらスーツを着ていたから、ホストなのだろう。


「…"キョウ"…」


それが、彼の名前なのだろうか。

彼の声が、彼の目が、香りが忘れられない。

腕を引かれた時に感じた、うっすらと煙草の混じった香り。

煙草の臭いは苦手だ。でも、彼の香りは「好きだ」と思った。





それはきっと、恋の始まりだった。



< 20 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop