うそつき王子の秘密のキス


 例え、この声を失っても。


 顔が、無くなっても。


 魂の熱さで、オレをみつけて……!




 そう歌えば、必ず大勢の観客(みんな)が「「絶対見つけてやる~~」」と返して叫んでくれた。


 のに!


 ……今は観客の声援がやけに、遠い。


 なぜだ!? と心の中で叫んで思いだす。


 ああ、そうか。


 本当に声を失ってみれば、誰もオレを振りかえっちゃ、くれなくなったんだ。


 そう。今のオレは歌なんて歌えないはずだったんだ。


 思いだしたその途端。オレはいきなり声が出なくなっていた。


 喉を行き来するのは、息だけで、うめき声さえ出て来やしない。


 はあはあと、みっともねぇ荒い呼吸を何回か、マイクに叩きつけた揚句。


 息の吐き過ぎで、めまいを起こし、ステージの床に両手をつけば、マイクはハウリングを起こして、耳障りな音を立てた。


 そんなオレを見て、ライブハウスに詰めかけてた満員の観客は、一斉ステージから背を向ける。


 そして、今まで一緒に笑いながら演奏していたバンドのメンバーたちも、次々に演奏を止めて消えて行った。
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