うそつき王子の秘密のキス
本人はめんどくさいのか、特に誰かと話したり、クラスに溶け込む様子も無い。


休み時間でも、一人で教室の隅で勉強をしているガリ勉君だ。


 いかにも、今まで勉強しか興味ありませんでした。なんて、主張しているような、もさっとした髪形と、黒ぶち眼鏡が女子の間では人気なく。


 一見ひ弱そうに見えるクセに、誰の側でも委縮せず。


 顔の作りもごく普通のフツ男君のくせに。イケメン君がやればキマりそうな気障なしぐさを、時々。


 ほとんど無意識に見せるところが男子陣から反感を買ってた。


『なんだよあいつ! 喋れねぇくせに、態度デカ!』


『モデルでもねぇのに、ふざけんな!』って所、みたい。


 そしてそんな風に、クラスのみんなと井上君が、上手く行ってないとなると。


 クラス委員のわたしが、なんとか頑張って両方の橋わたしをしなくちゃいけないよね?


 喋れない井上君のために、なんやかやとお手伝いをしているうちに、わたしが井上君を好きだと。


 そして井上君が、わたしのコトを好きだと、変なうわさが立った挙句……


 今日、とうとう黒板にでっかく相合傘を書かれちゃったんだ。


 『井上 奏太(いのうえ かなた)』
 『泉川 幸(いずみかわ さち)』


 なんて!


 フルネームで書かれるなんて、どんだけよ~~


 あは。


 わたしも、あんまりヒトと喋るの得意じゃないからなぁ。
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