Fun days

再び

美桜と村田は、鈴ちゃんがいた
ベンチを目指して歩いていた。

何となく急ぎ足になってしまう二人。

午後の講義が終わったあとだからなのか
部室棟には前に来たときより人がいる。

広場で踊っている人、
楽器を演奏する人、
ただしゃべっている人、
色々な人がいる。

みんな撮りたい、と美桜は思ったが
とりあえずここは我慢して素通りする。

鈴ちゃんが座っていたベンチには
知らない人がいた。

鈴ちゃんがいない、どうしよう…
言いだしっぺの村田は、責任を感じて焦った。

しかし、美桜は物怖じせず

「あの、鈴ちゃんいますか?」

と聞く。

「鈴ちゃんは中にいるよー」

タバコを吸っていた女の人は
立ち上がって奥の部室のドアを開けた。

開けたドアの中をのぞくと、
鈴ちゃんはギターを抱えて座っていた。
そして、ピアノに向かっているのは中沢さんだった。

「鈴ちゃん!ギター弾くの?」

美桜がびっくりして聞く。

「美桜ちゃん、私ジャズ研だって
 言わなかったっけ?」

鈴ちゃんが笑って答える。

「ごめん、ジャズ研って演奏するんだ。
 聞くだけかと思ってた」

「たまに昼休みに中庭で
 演奏してるんだけどなあ~」

ああ、たまに中庭から
音楽が聞こえてきたかも。

「今度演奏するときは教えて…」

ちょっと申し訳なさそうに美桜は言う。

すると中沢さんが
ピアノを静かに弾きはじめた。

「ごめんね、練習の邪魔しちゃって…」

美桜が小声で言うと

「大丈夫だよ。遊んでるだけだから。
 あそこに座ってゆっくりして行きなよ」

鈴ちゃんは部室の中のソファを手のひらで指した。

「村田君もどうぞ」

不意に自分の名前を呼ばれてびっくりする。
なんで知ってるんだろう…

しかし鈴ちゃんは
中沢さんのピアノに合わせて
ギターを弾き始めたので聞けなかった。
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