Fun days

試合3-4

第三クォーターは杏子と話していて
あまり見ていなかった。
本当に村田の動きは悪かったのかな、と思うほど、
第四クォーターの村田は活躍していた。

「美桜ちゃん、村田君に何したの?」

「リストバンド、つけてあげただけなんだけどね…」

見てて恥ずかしいくらい、張り切っている。

「愛の力は偉大だね…」

「うん…」

言いながら、顔が熱くなる。
シュート決めるたび、満面の笑みでこっち見るし。
恥ずかしがってたのは、何だったんだ…

「村田君て、本当に素直でいいよね」

「うん。それは思う」

村田の素直なところは、本当に好きだな。

「美桜ちゃんも素直になりなよ」

「え?素直じゃないかな、私。
 …杏子ちゃんもなんじゃない?」

「あー…。そうかなあ」

「お互い、村田を目指してがんばろうか。
 …いや、でもあの子、結構アホだよ」

「素直すぎる気がするね」

「そうそう。」

二人で笑っていると、長い笛が鳴って
試合が終わった。

「あ、片付け行かなきゃ。美桜ちゃん、あとでね」

「うん。」

杏子を見送り、試合から戻ってくるみんなを
立ち上がって待っていると、
健吾が手を広げて近づいてきた。
ごく自然なことのように、美桜にハグをする。

「ちょっと、…何?」

「試合終わるとこうするんだよ」

「そうなの?」

ずっと交代せずに試合に出ていた健吾は
汗だくで、ちょっと触りたくないんだけど。
労ってこたえてあげたいけど、腰が引ける。

「健吾。美桜ちゃんをからかうな。村田怒るぞ」

佐々木が通り過ぎながら言う。

「いいじゃん、ちょっとくらい。彼女貸せよー」

美桜から離れずに健吾が言う。
…やれやれ。
健吾を突き飛ばすようにして離れた美桜は、
村田にタオルを渡す。

「お疲れ様。かっこよかったよ」

村田は頷いてタオルを受け取るが、顔が拗ねている。
美桜はしかたない、と思って、
村田にハグをして、頭をポンポンと撫でた。
しかし、村田も汗だくなので、すぐ離れる美桜。
村田はタオルで顔を隠すように、汗を拭き始めるのだった。
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