恋の治療は腕の中で
あの後中田くんは、何もなかった様に心奈達とお喋りしていた。

私はと言えば普通になんて出来ない。終始心ここにあらずって感じだったと思う。

もしかして中田くん私のことからかったのかな?

うん。そうだよ絶対。じゃなきゃ今こうして普通でなんていられないもん。

心奈は、藤堂先生のことがきになって仕方がないんでしょう。なんて言ってたけど……、

そうだ!悠文に気付かれないようにしなきゃ。


瑞季達には今日中田くんが一緒だったことは悠文には内緒にするよう頼んで別れた。


ガチャ

そっと玄関の扉を開くけど、まだ悠文は帰ってきてないみたい。

「紗和。なにやってんだ。」


ひゃっ

「どうした?」


「い、いやー、何でもないよー。

急に声をかけるからちょっと驚いただけ。」

はははっ


ヤバい悠文にバレないようにしなきゃ。

「ほら、いつまでもそんなとこいないで入るぞ。」

リビングのソファーに二人で座って

「随分早かったね。」

「ん、あ~。野郎ばっかで飲んでてもつまんないからとっとと帰ってきちゃったよ。

ところで、紗和さんは誰と何処へ行ってたのかな?」

そんな顔で紗和さんって、悠文恐すぎなんですけど。


「瑞季と心奈と三人でご飯食べてきたんだよ。」

手に汗が……。

「まさか、あいつの店に行ったんじゃないよな?」


マズイ、お店のことまで黙ってくれるよう頼んでないよ。月曜日に忘れずに口止めしなきゃ。


「はははっ。まさかそんな。居酒屋だよ。

女三人で。」


「ふーん。紗和は酒弱いんだからあんま飲み過ぎんなよ。」


ごめん悠文。あんまり優しくしないで~。
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