あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。




「それじゃあね。 これから国を整えたりしなくてはいけないから、また、あまり会えなくなっちゃうわね」

「あたし、魔法で会いにこようか?」

「……そうね、嬉しい!……あ! これを持っていって」



 そういって、紗桜に手渡されたのは、さっきローズ姫が持っていたピアスだった。


 けれど、さっきと違うのは、モチーフになっている天使が泣いていないことだ。


 涙を浮かべているけど……とても幸せそうに、微笑んでいる……。



「これを持っていて。 私はもう片方を持っているわ。 これで、魔力を込めれば、連絡をとれるわ」



 紗桜は、自分の右耳につけていたピアスを見せてくれた。


 そして、自分のを見つめる。



「わぁ、ありがとう!……でも、あたしピアス開けてないや」



 痛そうだし……。



「そうね」



 紗桜はパチンと、指を鳴らした。


 すると、手の中でピアスがイヤリングになる。


 わー、こんなこともできるんだね、紗桜……。


 あたしは、そのイヤリングを耳につけた。


 耳もとで奏でられるシャラシャラという音は不思議と安心して、心が落ち着いた。



「それじゃあ」

「またね」



 あたしたちは引き寄せられるように、抱き合った。


 ふわりと、紗桜の懐かしい香りに包まれる。


 そして、どちらともなく離れた。


 また、会えるよね。


 そう信じて。



「行こう」

「うん」



 少し離れた位置であたしたちを見守っていたカカオに呼ばれ、あたしたちは別れた。



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