あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。
「うぅ~……」
階段は思ったよりも長く、螺旋状になっていていくら降りてもたどり着く気がしない。
何階分降りたかもわからない。
それより……暗くてなにも見えないよぉ!
暗くて周りが見えないとこだけは無理なんだよ〜!
知ってる場所とかだったら別なんだけどね。
「王子~……どこにいますかぁ~……」
もう泣きそうになっているあたしは、無意識のうちに王子を呼んでいた。
も~!
どこ行っちゃったの?
あたしを置いていかないで~!
「大丈夫か」
「っ! 王子!」
目の前が突然明るくなったかと思うと、目の前に王子がいた。
彼の前に差し出された手に、丸いオレンジの光が点っている。
それが、彼の白いキレイな顔をさらに美しく、暗闇の中で照らし出していた。
あたしはそれをまじまじと見つめた。
はぁ~……。
本当に理想の王子様だよね~。
ちょっと無愛想なとこが残念だけど、それもいいかも!
「どうしてにやけているんだ? いくぞ」
「はい! あ」
「また弱音を吐かれたらたまらないからな」
王子は、あたしの手を空いた手の方で取ると、階段を降りはじめた。
ひんやりとした、心地のよい体温が、なぜかとても熱く感じてしまう。
彼はどこか冷たく無愛想に見えるけど、実はそうじゃないのかもしれない。
こういうさりげない優しさって、凄いなぁ……。
どこか冷たかった心がじんわりと暖かくなった。
しばらくすると、視界が開け、ぼんやりとした光があたしたちを包んだ。