【短】溺愛ショコラ



『んもうっ!遅いじゃない!私、2時間前から茉子ちゃんが来るのスタンバッてたのにぃっ!』

「す、すみません…。っていうか、先生?」

『ん、なぁに?』


今すぐ離れたいのに、もぞもぞすることもできないのは、私の体に巻き付いているガッチリした腕のせい。

私の顔面に張り付く胸板も、女性と比べてとても厚い。

抱き付かれて戸惑う私を無視して、誰もが見惚れるキラースマイルを向けてくる彼女――いや、彼はオネェだ。


「とりあえず、離してくれませんか?そして、中に入らせてください。」

『んー、前者は却下。でも、後者はOKよっ♪さっ、入って!』


結構低いトーンで言ったのに、軽いノリで返された私は、彼に抱きしめられたまま彼の自宅・兼仕事部屋に入室することに成功した。


「いい加減、離してくださいーっ」

『やだっ、可愛いー!茉子ちゃん、私の旦那にならない?』

「何言ってるんですか。私、女です。性別逆転しちゃってるじゃないですか。」


いつものオネェジョークを交わしつつ、やっと息苦しい彼の腕から解放される。

リビングを突っ切って、彼の仕事部屋に向かうと、そこには昨日まで私が整理整頓をしておいたはずの書類が部屋中に散乱していた。



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