【短】溺愛ショコラ
「洗濯物はすぐ溜まるし、」
『でも、茉子はそれに気付いてわざわざ来てくれる。』
「先生は、へっ、偏食だし、ピーマンも人参も食べられないほどのお子様だし、」
『でも、俺の栄養のことを考えて、摩り下ろして俺が分からないように料理してくれてる。』
「お土産買ってこないと不機嫌になるしっ、」
『だって甘いものが欲しくなるんだ。』
「人見知りだって言うくせに、寂しがり屋だしぃ…っ」
『茉子にそばにいてほしいんだから、仕方ないだろ?』
こんなに先生の悪口は次から次へと出て来るのに、どうしてなのか憎めない。
先生への愚痴を言っている私に、私の些細なことも見てくれていたことを言葉にしてくれる先生に、涙が零れ落ちる。
この涙は、一週間前の悲し涙ではなく、こんなに近くにも私のことを見てくれていた人がいたんだという、嬉し涙。
「ひっく…っ、それでも、なんでか先生はっ…私の心の変化に敏感で…っ、私のウソもすぐ見抜いちゃうしぃ、」
『だって、なるべく自分の好きな子がどんなこと考えてるのか知りたいだろ。』
「私のことはあーだこーだ口出しする癖に、自分のことは何も語らない秘密主義だし…っ」
『自分のこと話すの、苦手なんだよ。…でも茉子が知りたいって言うなら、全部教えてやる。』
ポタリポタリと流れ落ちる涙を、先生の温かい手が拭ってくれる。
先生を憎めないのは、ちゃんと私は先生の優しさを心の奥で感じていたから。