この気持ちに名前をつけるなら
act1
新年度。

私、野上 一子(のがみ いちこ)は、今日から高校2年生です。



「さぁ、2年生も稼ぐぞー!!」



ゴン!


クラス替えの表で自分の名前を確認して、私は決意新たに拳を握り締めると、すぐ隣で壁に頭突きをかます女子が一人。



「あ、さおり。おはよ」



よく見ると親友の仁科 さおり(にしな)だった。

かわいい顔なのにオデコがかわいそうである。



「おはよ、じゃないでしょー!!」



両肩に負のオーラを纏うさおり。

え、何か怒ってる?



「稼ぐって!稼ぐって……!もう一子は!それが本音だとしても!一子だって華の女子高生なんだから!!」



あ、なるほど。

確かに女子高生らしからぬ発言だったかもしれない。



さおりは中学からずっと仲良し。

肩まで伸びたふわりと内巻きの髪、ぷるんと膨らんだアヒル口の唇は女の私でもかぶりつきたくなる素敵女子である。

高校生になってからまた可愛くなった。

自慢の友達だ。



「ごめんごめん。でも私部活もやってないし、ホントにバイトしかない気が」



あ、本分は勉強か。

でも私進学する気もないしな。

留年さえしなければ。



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