血の記憶







「………お邪魔します」


「ふふっ、奈央緊張してるの?」



この人には私が緊張しているように見えるのだろうか


緊張しているんじゃなくて怯えているのに。


でもまだ家の人がいるんだったら……。











「大丈夫だよ、今この家に誰もいないから」



その一言は私の些細な希望を打ち砕いた。


なにが大丈夫なのよ、こんな逃げ場がないところに連れてこられて。


前みたいに怒らしてしまったらなにをされるか分かったもんじゃない。


でも今日は機嫌が悪くないみたいだ。


このまま最後までやり過ごせたら―――。



ガチャッ



私を暗闇へと引きずる音が玄関に響いた。





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