君が嫌いで…好きでした

屋上に着いた時にはもう手遅れだった



湊「千菜ぁ!!!」


俺の声は届かずに千菜はその身を投げ出した
がく然とするしかなかった
聞こえた鈍い音と騒ぐ人達の声が聞こえた



湊「ちくしょう…!」



俺がもっと早く気づいていれば助けられた!
かなだけじゃなくお前まで…!


急いで下に降りると血だらけの千菜がタンカに乗せられて運ばれていった

千菜が運ばれた部屋に手術中の赤い文字が点滅した


こんな時でさえ俺は何も出来ないのか
俺はどうすればいいんだよ…
祈ることしか出来ねぇ…

かな…千菜…死ぬなよ…!



―――――…奏叶…こんな私が彼女でごめんね
でも大丈夫。奏叶は助かるよ
私が貴方の命になるから…貴方が目を覚ました時、そこに私は居ないけど…私の分までどうか生きていて

こんな事になるならもっと沢山伝えておけば良かった
ありがとうって…大好きって…
でも後悔しても遅いよね…
私馬鹿だから今さら気づくんだよ…

我が儘を言うなら最後に笑った奏叶の顔を見たかった…




遠い意識の中、気が付くと真っ白な世界に1人たたずんでいた


千菜「ここ…どこ…?」



足元には不思議な色でキラキラ輝く花が微かに揺れ動く
何の音もしない静かな空間…



千菜「…私…死んだのね…」



それだけが分かった気がした
なら…奏叶は助かったのかな…


大丈夫…だよね…
それも分からなくて怖くなる
例え…助かったとしても貴方の隣に私がいる未来はない


千菜「…っ……」


そんなの…考えただけで胸が張り裂けそう
信じて見たかった
奏叶と生きる未来を一緒に…


千菜「うっ…うぅ…」


涙が次から次へと溢れ出る
寂しくて苦しい
後悔しても遅いのに…


誰も居ない静かな空間で私は1人泣き続けた


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