君が嫌いで…好きでした

……どうして先生…

もう大丈夫だって…
元気になったって言ってたじゃん…
私の未来を見届けるって言ってたじゃん…


なのに…なんで?
先生は…嘘つきだよ……


……聞いた話じゃ勤務中に突然の発作で倒れたって…

………あの日あの時、学校に来た救急車に乗せられていたのは……伊藤先生だったんだ…

でも…なんでこんな急に……


…もしかして先生は分かっていたんじゃ

あの時…私を呼び止めたのは…
もしかして病気の事を言おうとしてたんじゃ…



…ポタ…………


冷たい雨粒が頬をつたっていく…
そして…涙もこぼれ落ちる



千菜「ぅ……うぅ……」



先生……っ…
どうして何も言ってくれなかったの…?


先生はいつも私の事を助けてくれてたのに……私は…先生の事を助けることが出来なかったの…?


結局…私は……



奏叶「…………風邪…ひくよ」



体中に当たっていた雨が遮られる
私の後ろには傘をさしている奏叶が立っていた…

中から微かにお経がまだ聞こえる
外は相変わらず雨が降り続いている


千菜「かな……と…」


奏叶「……そんなびしょ濡れで…また倒れるよ」



奏叶の優しさも…ただ私を苦しめた…



千菜「先生は…先生は…私のせいで……っ
やっぱり…駄目なんだよ……
私が先生に関わらなければ…先生は死ななかった……!」


私のせいで先生は死んでしまった…
やっぱり望んではいけなかった

泣いて悔やんで…今さら後悔しても
先生はもう2度と戻っては来ない…
きっと…奏叶だって……



奏叶「………俺…知ってたよ」



千菜「…ぇ……?」


知ってたって……何を…?


奏叶「…前…千菜が保健室で倒れた時…」



――――――――…


伊藤「…お前なら安心だな
…………お前の事を信じて1つ話がある
大事な話だ、よく聞けよ」


奏叶「なんだよ急に深刻そうな顔してさ
大事な話?」


伊藤「…そうだ。俺の…病気についてだ」



奏叶「病気?あんたが?なんかの冗談?」



伊藤「ははっ、見えないか?
でもこんな時に冗談なんか言わないさ」



奏叶「…本当なのか?」



伊藤「…生まれつきの重い病気なんだ
今までずっと手術とか繰り返して来たけど治らないんだ

そんな風に見えないだろ?
俺が22の時に診察に言ったらさ
23まで生きられないだろうって余命宣告されてさ
なんてゆうか…絶望したよ…
そんな時に東に出逢たんだ

関わってる内にあいつの過去の事とか聞いてほっとけなかった
教師として助けたいって思ったんだ

少しも笑わない東を見てこの子が笑える時が来るまで俺は死ねないって…強く思ったんだ

だけど最近…調子が悪くてさ
病院に行ったらもう手遅れのところまで病気が進行してたんだ

七瀬…俺はもうじき死ぬんだ
だから東の事しっかり支えてやれよ」



奏叶「…待てよ!勝手なこと言うなよ!
お前が死んだら…千菜は…!
千菜はあんたの事を大事に思ってんだよ

千菜の笑顔取り戻すんだろ!?
俺も協力するからさ!病気を治して…っ」



伊藤「無理なんだ七瀬。治らないんだ」



奏叶「……そんな…!」



伊藤「…お前にだけは伝えておく
東には言うなよ
心配するに決まってる

それに…俺が死んだらきっとまた自分を責めるだろうからな…
その時はお前が東を支えてやれよ」



奏叶「……分かった…約束する」



伊藤「良かった、ありがとう七瀬

でも……23まで生きられないって言われてた俺がここまで生きられたのは…東が居たからかもしれないな…」―――…

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