小さなキミと

睡眠薬

ゴンッと鈍い音がしてテーブルが揺れ、その拍子にオレのシャーペンの芯が折れた。


「いったぁ……」


おでこを押さえながら剛はそう言い、ムクリと痛そうな顔を上げた。


それから、そいつはオレの正面で「ふぁあ」と大きな欠伸をかます。


片方の頬が不自然に赤くなっているところを見るに、

頬杖をついた状態から頭がずり落ちて、おでこを机にぶつけたんだろう。


「涼香大丈夫? そういえば、頭痛はどうなったの?」


剛の隣の綾野さんが問いかけ、「だいじょーぶ。へーき」と幼いしゃべり方で答える剛。


剛がおかしい。

明らかに、変だ。


つい30分前まで顔を歪めて頭を押さえていた剛が、この短時間で今にも眠り込んでしまいそうな状態になっている。


「薬の副作用かなぁ。剛さんって、薬飲むと眠くなりやすい感じ?」


圭の声が聞こえなかったのか、剛は俯いたまま返事をしない。


「おーい、剛さん?」


「涼香ー?」


圭や綾野さんの声に、ハッとして顔を上げた剛。


「えっ、なに、何か言った?」


剛の目は半開きで、焦点が合っていないように見える。


「だから、薬を飲むと眠く……ダメだこりゃ」


圭が最後まで言うのを諦めたのは、剛の目がまた閉じられて、頭がグラグラし始めたから。


「また頭ぶつんじゃないの?」


オレが言ったそばから、ゴツンと痛そうな音がした。


剛はそのまま机に頭を乗っけた状態で、スースーと静かな寝息を立て始めてしまった。

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