小さなキミと
「だからさぁ、もしも」


「言うな分かったから」


圭は今度こそ口をつぐんだ。

好きです、付き合ってください。


剛がオレに向かってその台詞を言うところを想像してみる。


ああダメだ、その後笑い転げて『冗談に決まってんじゃん』とか言われたわ。


オレの想像だから、オレの自由なはずなのに。


「アイツがオレの事そーいう対象で見てるとは思えない」


意識しすぎて、変に意地を張っているような声音になってしまった。


隣で「やれやれ」と呟いた声が聞こえる。


「でもさぁ、お前されたじゃん。キス」


圭が発した“キス”という単語にギョッとした。


「それ言うなよお前……」


オレは、一瞬で沸騰した顔を伏せる。


「んー、奏也ってなんかズレてんのな。
大体何で他人と間違えたって発想になるんだよ。
まずは、もしかしてオレのこと好き? ってなるもんだろ普通」


圭がそんなことを言ったせいで、オレの記憶はあの日に飛んだ。


あの唇の感触と、レモンのような甘酸っぱい香りが蘇る。


「うわもうやめろよ面白がってるだけだろお前ーーーーッ」


喚きながら、オレは自分の頭をかきむしる。


隣でアハハと笑うあたり、圭はやはり面白がっていたということだ。


「まっ、何でもいいけど手遅れになる前に行動起こせよ?
とりあえず、避けるのは止めなね」


「……努力する」


話を畳んだ圭に、一応オレはそう答える。


だけど実際のところ、行動を起こすどころか、剛と今まで通りに接せられる自信さえ無かった。


どう接していいのか分からなくて、結果的に避けてしまっているぐらいなのだから。

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