小さなキミと

茹でダコはお互い様

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4月も後半に差し掛かり、桜がすっかり散ってしまった今日この頃。


終礼が終わった教室は、掃除のために机をガタガタと運ぶ音や、男子のふざけ合う声、女子の甲高い笑い声で溢れていた。


結と教室で別れたあたしは、体操服を抱えて、いそいそと女子トイレへ向かった。


この後すぐに部活があるので、早く着替えないといけないのだ。


「日向(ひなた)いるー?」


使用中の個室があったので、あたしは外から声をかける。


「はぁーいっ、いるよー」


弾んだ返事が聞こえてきた。


「今日はサポーター、ちゃんと持ってきた?」


あたしがそう訊くと、閉まった扉が答える。


「当ったり前じゃん。2日連続で忘れるほど馬鹿じゃないよ」


その直後、ガチャッと鍵を開けた音が響き、体操服を着たショートカットの女子が姿を現した。


すらっと背が高く、きりっとした大人っぽい顔立ちの彼女の名は、綾野 日向(あやの ひなた)。


同じクラスで、あたしの右隣の席の子だ。


短すぎる前髪のせいで、せっかくの美人が少しだけ幼稚に見えてしまうのが残念だ。


「アハハ、そっか」


「そーですよ。っていうか、今日男女混合なんでしょ? 初めてだよね。イケメンいるかなぁ~」


そう言いながら、鏡の前へと移動した日向。

口元に笑みを浮かべて、自分の髪を手ぐしで整え始めた。

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