小さなキミと
「っていうかアンタ、自分の席で待ってなよ。うっとおしいんだけど」


「もうすぐ呼ばれるからこっち来ただけですー。べっつに剛に会いに来たワケじゃありませーん」


嘘つけ!

あたしの点数覗くためにわざわざ教卓を通り過ぎたくせに!


服部の憎たらしい喋り方にカチンときて、思いっきりぶち切れたい衝動をなんとか抑える。


この程度でいちいちぶち切れていたら、あたしの体力が持たない。


「服部ー」


「おっ」


ようやく名前が呼ばれた服部は、ぴょこぴょこ跳ねるようにして教卓へと向かった。


嬉々として答案用紙を受け取った服部は、一瞬でガラリと表情を曇らせる。


服部はそのままの表情でササッと自分の席に着席すると、血眼になってテスト用紙を見直し始めた。


採点ミスを探しているんだろうけど……

さっきの自信満々な様子から考えたら、えらく滑稽(こっけい)だ。


プッ。

服部のヤツ、思ったより点が取れてなかったんだな。


少し身を乗り出したあたしは、左のそのまた左の席の服部に声をかけた。


「おーい、服部ー。さっきの自信はどうしたー」


「うるさい黙れ、オレは今忙しい」


視線を机に縫い付けたまま、服部がイラついた口調で言った。


完全な八つ当たりじゃん。

面白くないの。


あたしはそーっと席を立って、服部の席の後ろに回り込んだ。

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