絶対やせて貰います。

「旭……本当にすまない……悪かったと思っている」

「えっ……俺に謝る理由は何、父さんやっぱり浮気してるの?」

突然旭君に向かって謝罪の言葉を口にして頭を下げた小岩井父に旭君も動揺を隠しきれない。

「違う。絶対にそれだけはない……私にはマリアさん以上の人はこれからも現れないよ」

「だったら……」

何についての謝罪の言葉だったのだろう?

もう全てを話す覚悟を決めたのか小岩井父が口を開いてゆっくりと話し出した。

それは半年前まで話が遡る。

部署異動で残業が多くなったのは本当のこと。

でも家族にも話していない事柄が他にもあった……

ある出来事で逆恨みされている、そんな因縁のある人物が直属の上司になった事で一層仕事がやり辛くなってしまったと……

そしてその上司から呼び出されて言い捨てられた言葉に衝撃を受けたと話す。

『自分の体重もコントロール出来ない人間は仕事も出来ないと判断されても仕方ないよね?

このままだとリストラの対象だから……』

愕然とする小岩井父をその上司は楽しげに眺めていたらしい……

性格悪っ……そんな人に限ってゴマすりとか得意そう。

「息子は大学3年、娘は高校3年でこれから幾らでもお金が必要になるし、

住宅ローンだって残っている。

今の仕事を失う訳にはいかない。

だから痩せるしか無かった……」

「それならどうして家族に何も話してくれなかったの?」

小岩井父も一人苦しんで居たのかも知れないけど、旭君の言う通り、

どうして家族に何も相談しなかったのだろう?


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