マネー・ドール -人生の午後-
「真純?」
「うん?」
「眠れないの?」
心配、してくれるんだ。思い切って、言ってみようかな……でも、イヤって言われたら、どうしよう……
「眠れないの」
「そんなに、悩まなくても大丈夫だよ」
「うん……」
慶太が、私の手を握る。
「慶太、あのね……」
「何?」
 慶太の体に、自分の体を、摺り寄せて、脚を絡めて……
暗いからよくわかんないけど、たぶん、慶太は驚いた顔をしたと思う。
だって、こんなことしたの、結婚してから……ううん、本気で、私から、慶太を欲しいって言うの、初めてだもん。
 慶太の手が、私を抱き寄せて、唇が重なる。優しく、うっとりするような、キス。
うん……そうなんだけど……何か、言って欲しいの。

 ……言葉が、欲しいの……

「慶太……好き」
「俺も、好きだよ」
「……したいの……」
あ、言っちゃった……

「嬉しいよ、真純」

 慶太の重み。慶太の匂い。慶太の体温。
 私は慶太に包まれながら、また将吾のことを、思い出していた。
 あの夜から、慶太と何度もセックスしたけど、私は、なんとなく、昔みたいに、純粋に、セックスを感じられない。
慶太との、セックスは、素敵で、優しくて、また変だけど、オシャレで、映画のベッドシーンのように、美しい。
今も、慶太は私の上で、私のカラダに優しくキスして、撫でて、肌を絡ませて、なんか、眠っちゃいそう……
 優しくしてくれてるんだよね。大切に、私のこと、してくれてるんだよね。でもね、ほんとはね、もっと、……強く、求めて欲しい時もあるの。

 比べてしまう。空っぽになっていた心に、あなたが水を満たしてくれたあの夜から、初めて愛して、初めて愛してくれた、あの人と。
強く、強引なくらい、私を、激しく愛してくれた……将吾……。
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